「目に見えるものはすべてパッケージ化される 」とよく言われます。しかし、そのパッケージを作るために何が必要なのか、立ち止まって考えたことはありますか？そして誰がパッケージを作っているのでしょうか？優れたパッケージの陰に、パッケージングエンジニアというニッチな職業が存在します。パッケージングエンジニアの仕事に精通している人は、パッケージングエンジニアの役割は、製品の保護、収容、内容伝達、宣伝、適切な配置のためにパッケージを設計、開発することであると知っています。パッケージは業界や製品のニーズに応じて開発されており、そのようなニーズのなかには、他の何よりも大切なものもあります。例えば、パッケージングエンジニアが洗濯用洗剤のパッケージを開発する場合、開発プロセスでは容器への収容方法や用途が重要な要素になると思われます。一方、医療機器のパッケージには、保護性（物理的な損傷や汚染からの機器の保護）と用途に適った性能（無菌の状態で機器を搬送する性能）が要求されます。しかし私の経験上、パッケージングエンジニアの役割は、パッケージの設計や開発よりもはるかに複雑です。
イベントで体験したことをお話しする前に、少し自己紹介したいと思います。私は現在、カリフォルニア工科大学サン・ルイス・オビスポ校に在籍し、消費者向けパッケージングを専攻する経営学部の学生として3年目を迎えています。学生の私は、はじめは自分がパッケージング業界のどこに、どのように身を置けるのか、よく分かりませんでした……ヘルスケア・パッケージングと出会うまでは！Johnson and Johnson Surgical Visionで初めて協同学習を経験した後、ヘルスケア・パッケージングが人々の暮らしを改善し、命を救うほどの影響力があることを知り、この業界に強く惹かれました。
私がパッケージングエンジニアとしてのキャリアの中で学んだ最も重要なことの1つは、パッケージングエンジニアがどのように仕事をし、その仕事がどのように製品に付加価値を与えるかを他の人に伝えることの重要性を、過小評価すべきでないということです。つまるところ、パッケージ＋デバイス＝製品なのです。パッケージングは専門職ですが、業界によっては、この職業が担う役割についての認識や理解が進んでいないのが現状です。そのため、パッケージングエンジニアは製品開発プロセスの遅い段階で参加することが多く、不必要なパッケージングの失敗を招くことがあります。設計検証の段階でパッケージングの問題が明らかになると、スケジュールが遅れ、リソースが無駄に利用され、規制当局の監視の対象となるおそれがあります。適切なタイミングでトレーニングをすれば、プロジェクトチームのメンバーは、製品の変更点や決定事項をパッケージングエンジニアに伝え、パッケージングの問題を生じさせるような要素を排除できます。
規制に関しては、ヘルスケア・パッケージングのエンジニアとして、パッケージに関する特定の規制や標準規格（ISO 11607など）を理解することは、自分の役割を果たすうえで不可欠です。パッケージングエンジニアは、規制当局からの質問に答え、パッケージングに関する決定がなされた根拠を論理的に説明する責任を負っています。標準規格の内容を暗記する必要はありませんが、サンプルサイズ、選択したテスト手法、最悪の事態が起こった場合の理由説明など、決定の背後にある「理由」を必ず理解していなくてはなりません。この情報を知ることで、パッケージングエンジニアはプロジェクトチームのメンバーの信用と信頼を得て、規制当局からの質問に備えた万全の準備ができるようになります。
パッケージングエンジニアの責任はそれだけにとどまりません。パッケージングエンジニアは、サプライヤとの関係に責任を持ち、標準化されたテスト手法の変更に影響を与えるために標準規格委員会の会合に出席し、ラボでパッケージングをテストし、臨床現場での手順を確認するために病院を訪問することもよくあります。プロトコルやレポートの作成、問題解決、製造現場でのオペレーターの観察と訓練、サンプル作成、装置やプロセスの検証、プロジェクト会議のリード、リーダーや同僚へのプレゼンテーションなどを行います。上記に加え、透明性、明確で一貫したコミュニケーション、信頼を育むような方法で自分の責任を全うすることが、製品発売の成功につながります。
持続可能性への注目の高まり、臨床現場向けパッケージの使用から家庭内での使用への移行（例：新型コロナウィルス感染検査キット）、eコマーススペースなど、パッケージングを通じて影響を与える機会は無限にあります。ここまで読めば、あなたも「目に見えるものはすべてパッケージ化される」という言葉を聞いたとき、その舞台裏で活躍するパッケージエンジニアのことを思い浮かべることでしょう。
