滅菌の基礎:パッケージングエンジニアとして知っておくべきこと

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医療機器に使用する滅菌の種類(または様式)によって、無菌遮断システムに向けた材料の選択が影響を受ける場合があります。そのためパッケージングエンジニアとして、滅菌とは何か、滅菌の様々な種類を理解することが重要です。

滅菌とは、タイムリーかつ効率よく医療機器から微生物を除去するプロセスです。そのような微生物を除去することは、デバイスによって疾病の伝染を防ぐために重要です。ほとんどの使い捨て医療機器では、滅菌は製品化プロセスの必要不可欠なステップのひとつとなっています。

医療機器のパッケージング業界では、「最終滅菌済み」という用語が使われることが多々あります。最終滅菌とは、最終的なパッケージングの段階で製品を滅菌するプロセスのことです。ISO 11607で定められている通り、最終滅菌済み医療機器のパッケージングシステムとは、滅菌を可能にし、物理的な保護を提供し、使用時点まで滅菌を維持し、無菌状態を可能にすることです。滅菌プロセスは有害なストレスを加え、無菌遮断システムを無理して行うことにもなりかねませんので、できる限り各様式について理解することが重要です。

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滅菌様式には、化学、放射線、熱の三大様式があります。

化学:伝統的に最も人気の高い滅菌様式。特にエチレンオキシド(EO)は多用されます。微生物を効果的に死滅できること、簡単に利用可能であること、何十年にもわたって行われてきたこと、数々の素材に対応できることが、人気が高い理由です。その他、革新的な化学滅菌様式としてはNO2やVHPがあり、EOと同様の利点を多々得られます。ただし、このような革新的な様式はいまだに評価中であり、パッケージング素材として適しているのか判断を待っているところです。

放射線:放射線滅菌の三大タイプはガンマ、Eビーム、X線であり、現在最も一般的なのはガンマです。放射線によって医療機器のパッケージング素材が硬く荒くなる場合があり、性能に影響する恐れもあります。医療グレードの紙などセルロース系材料は、放射線滅菌によって変色する恐れがありますので避けることが重要です。

:熱を使った滅菌は通常、湿式加熱(蒸気)または乾式加熱の2つの方法で行われます。温度の上昇によってパッケージングのシールの一部または全部が改めて有効になる、または、フィルムのラミネートが剥がれるなどの問題が発生する可能性があることから、無菌遮断システム材料の選択肢は限られます。湿熱滅菌は、一般的に医療機器や再利用を目的とした装置に対して、医病院がオートクレーブで行う滅菌方法です。ただし、湿式加熱滅菌や鑑識加熱滅菌に適合するように特別に設計された、無菌遮断パッケージング材料もあり、使い捨てデバイス向けに使用することができます。

滅菌の種類にかかわらず、滅菌を行えば、無菌遮断システムには常にある程度の影響があることを、パッケージングエンジニアとして熟知しておく必要があります。AAMI TIR 17 「滅菌対象材料の互換性」は、このような滅菌様式およびその他の滅菌様式と材料の互換性に関する信頼の置けるリソースです。この知識により、材料とパッケージ設計を推奨する際に、適切に計画を立てることができます。

EOを例として、パッケージング設計と材料を決定する際に、パッケージングエンジニアが考慮すべき内容を考えてみましょう。EOの場合、パッケージ済みデバイスを効果的に滅菌するためには、無菌遮断システム内に多孔性基を備えていなければなりません。多孔性でEO滅菌に適した材料は、Tyvek® または医療グレードの紙です。多孔性基を備えた無菌遮断システムを設計するだけでなく、ラベルまたは最終的なパッケージングの配置のデザインによって、多孔性が閉塞されないようにしなければなりません。この閉塞性があると、EO滅菌サイクル内の無菌遮断システムに問題が発生し、シールのクリープなどパッケージング上の不具合に繋がる恐れがあります。

滅菌におけるパッケージングの役割は、滅菌を可能にし、使用時点まで無菌遮断システムを築くこと、使用時点まで無菌遮断を維持することです。滅菌プロセスに関連する有害事象から無菌遮断システムとデバイスを保護することが、成功のカギとなります。パッケージングエンジニアの皆さんへの私からのアドバイスは、滅菌様式を選択するのはあなた次第ではありませんが、会話に参加することが重要であることを覚えておくことです。プロセスの早い段階で滅菌担当の同僚と話し、要件や関連する有害事象を理解することが、優秀なパッケージングシステムを設計するのに役立ちます。

リソース

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