FDAの滅菌の技術革新への挑戦と、EPAによるエチレンオキシド(EtO)排出の新たな規制により、ヘルスケア業界全体で代替の滅菌手段を見つけ、迅速に広く採用することに注目が集まっています。二酸化塩素ガス(ClO2)など、選ばれたいくつかの代替物質がトップに浮上しているようです。ClO2は、ヘルスケアを含むさまざまな業界で長年にわたって滅菌剤として使用されてきましたが、ヘルスケアでの使用はEtOに比べて限られており、業界にはこのモダリティをよりよく理解する機会があります。私は最近、ヘルスケア分野で20年以上の実績があるClO2供給業者であるClorDiSys Solutions, IncのプロジェクトマネージャーであるEmily Lorcheim氏と、この技術について話しました。Lorcheim氏は、ClO2ガスの歴史と基本的な特性、さらに医療機器の滅菌にClO2を検討する際の利点と潜在的な注意点について教えてくれました。
基礎知識:
ClO2は80年代からガス滅菌剤として使用されており、飲料水や食品の処理に使用されています。一般にEPAによって安全であると認められており、特にClorDiSysのガス生成はEPA登録の滅菌法です。滅菌はチャンバー内(個々の無菌遮断システムまたは複数のパレットに対応するためにさまざまなサイズが利用可能)で行われ、滅菌を外注に委託することもありますし、社内の現場で滅菌することもあります。
EtOと同様に、ClO2は純粋に気体であり、優れた分散性と浸透性を備えています。ただし、EtOとは異なり、ClO2は室温でこの形態をとるため、EtOサイクル中に発生する高温に対応できない敏感なデバイス(エレクトロニクスやコールド・チェーン製品など)に使用できるという利点があります。ClO2は、滅菌用の濃度では非発がん性、非可燃性、非爆発性です。色は黄緑色で、チャンバー内での放出を制御できるよう、測光装置でリアルタイムに監視できます。また、水溶性であるため、他のすべての殺菌剤にはない水への浸透性があります。
利点:
- 純粋な気体 = 複雑な形状のデバイスなどへの浸透性に優れている
- 短いサイクルタイム(プレコンディショニングから最終エアレーションまで約4~8時間、すべてチャンバー内で可能)
- 滅菌は室温で行われるため、自動注射器、プレフィルド・シリンジ、電子機器や電池式デバイスなどの製品に使用でます
- 気体の特性と短いサイクルタイムにより、残留量は通常、製品やパッケージ上で検出可能なレベルを下回るため、ClO2は「ガス抜き」を経る必要がなく、引き続きすぐに滅菌されたパッケージと製品を取り扱うことができます
- ステンレススチール、陽極酸化アルミニウム、プラスチック、セルロース系材料、ガスケット材料、電子機器など、多くのデバイスやパッケージング材料に使用できます
- 滅菌は外部に委託しても、チャンバーを購入してパッケージングされた製品を社内で滅菌してもよく、EtOのスケジュールと量の要件を満たすのに苦労している新興企業や中小企業も利用しやすく、チャンバーのサイズもさまざまで、複数のパレットを収容できるものもあります
考慮事項:
- ClO2はFDAの認可を受けており、現在、医療機器の滅菌に商業的に使用されています。他の新興の滅菌法と同様にISO 14937:2009に準拠していますが、EtOのように特定の業界標準規格が存在しないため、規制の観点から、採用のハードルが高くなる可能性があります(ただし、業界の作業部会がこの課題に取り組んでいます!)
- ClO2にさらされると、材料グレードや含まれる化学物質の配合によっては、ポリカーボネートやシリコン基板が黄変する可能性があります
- 大型のマルチパレットチャンバーが利用可能ですが、現在は特に大量の処理をより適切に行うためにEtOまたは他の放射線モダリティがセットアップされています(現在、業界のデバイスの50%がEtOを採用しています……ClO2はまだこれと同等の種の需要を満たせるだけの規模にまで成長していません)
- 紙のドレープやガウンなどの製品は、吸収性により放射線治療法との適合性が高くなります。
業界がEtOの代替品を探し続けていくうえで、デバイスとパッケージング材料の適合性、拡張性、物流と財務への影響、および環境への影響を隅々まで理解することが重要になります。滅菌技術革新の課題を解決できるソリューションは1つではありませんが、ClO2は間違いなく、近い将来のテストにおいて特に注目し、検討に値する手段のひとつとなるでしょう。ClorDiSysとその滅菌技術について詳しくは、こちらをご覧ください。