内視鏡検査は、結腸鏡検査または「下部消化管」検査と、食道や胃を観察するために口からスコープを挿入する「上部消化管」検査の2つがよく知られています。今や、内視鏡検査分野は、人体のあらゆる解剖学的入口を網羅し、小さな切開口でその入口を作るケースも対象としています。食道、胃、大腸に加え、耳、鼻、喉、関節、心臓、腹部も内視鏡検査で観察することができます。この医学的専門分野は見過ごされがちですが、体外から体内の解剖学的構造を観察したり、処置したりすることができます。その他のあらゆる画像処理技術と異なる点は、検査する臓器や解剖学的構造にスコーピング・ツールを直接挿入することです。内視鏡検査が扱う医療ニーズには、結腸鏡検査のように健康状態を確認するための検診、原因や病気を特定するための診断的処置、さらには、内臓や部位に薬剤を直接投与する治療や、光やレーザーを使用して腫瘍細胞を死滅させる光線力学的療法などがあります。
沿革
最初の照明付き内視鏡は、1806年のドイツの「リヒトライター」でした。器具内にロウソクを固定して照明として使用するという案でしたが、発明者の早すぎる死によって、その設計も同じ運命をたどりました。次世代の装置は1826年にフランスで登場しましたが、患者の近くで直火のロウソクを照明として使用するものだったため、すぐに廃止されました。最終的には1853年に同じくフランスの外科医Antonin Desormeauxが、泌尿器科用スコープにより明るい(そしてより安全な)ガスジェネライトを使用する原型を考案しました。これにより、デソルモ内視鏡は初めて製造された内視鏡検査用医療機器となり、その発明者は「内視鏡検査の父」と呼ばれるようになりました。
医学的な前例がなく、「内科学」も極めて限られたものであったため、初期の内視鏡の設計が、最も抵抗の少ない女性の尿路や男女を問わず腸の出口を対象としていたのは当然のことでした。胃を観察するための胃内視鏡の試作が初めて記録されたのは1868年のことでした。このときドイツ人医師は、長さ47 cm、直径13 mmの胃鏡の試作品をテストするため、最初の患者として剣を呑み込む大道芸人に協力を求めました。記録として残っているのはこれだけです。
今日の研究開発チームは、初期のこうした手荒なやり方から発展してきました。しかし、剣を呑み込む大道芸人からAIやナノカメラにどのようにしてたどり着いたのでしょうか。
カメラの準備が整う
近代的な内視鏡検査が飛躍的な進歩を遂げたのは、それから80年以上後のことで、1952年に日本で最初の胃カメラ内視鏡が開発されました。この上部消化管内視鏡画像システムは、日本人外科医とカメラ会社オリンパスが共同で開発しました。この外科医は、日本人患者に多い胃がんを詳しく調べる方法を求めて、オリンパスの設計者に相談を持ちかけました。そして誕生したのが、オリンパスの胃カメラ1号機でした。
オリンパスは、医療機器メーカーとの提携を引き続き拡大し、1985年には、テレビ・モニターに画像を送信し、複数の人が同時に画像を観ることができる内視鏡を発売しています。
それ以降、高精細画像の進化は、生活の中のエンターテイメントの視聴や記録から、驚くほど精密な内視鏡機能まで、あらゆるものを一変させています。たとえば、現在最小の内視鏡カメラはScoutcam®製で、そのサイズは1 mm(照明を含む)です。あらゆる医療分野全体で続く小型化の傾向と、より低侵襲の手段でより多くを成し遂げる必要性が、今後も技術革新を方向付けていくでしょう。
最新情報と今後の展開
慢性的な消化器障害や疾患の多くは刻々と変化し、その診断や治療に内視鏡検査が有用なことに疑いの余地はありません。私たちが目の当たりにした進化はわずか200年の間に起こったことであり、それが衰える気配はありません。
2023年5月、FDAはオリンパスEVIS X1内視鏡検査システム、新型の上部消化管ビデオスコープ、新世代の下部尿路ビデオスコープの米国での使用を許可しました。これらの新しいシステムには、LEDライトの組み合わせ機能、強化された画像処理、暗視補正に加え、狭帯域画像処理(NBI™)技術が搭載されています。
MedtronicとNVIDIAは今年、内視鏡治療をさらに変革する、ディープラーニングによるAI内視鏡ソリューションの開発で提携しました。また、単回使用スコープも大きな可能性を秘めた注目の分野です。飲み込むことができる「錠剤カメラ」もデータ収集能力は高まっているにもかかわらず、引き続き小型化されています。
私たちが夢に描き、設計し、パッケージして製造するとすぐに、新しいものが地平線上に現れることを、これらすべてが証明しています。内視鏡検査も、見出しになることはまれですが、例外ではありません。結局のところ、医療の技術革新の未来を封じ込めることはできません。これは冒険であり、挑戦であり、責任なのです。