ヘルスケアにおける人的要因およびユーザビリティに関するFDA(食品医薬品局)の見解が初めて公開されたのは、2000年7月18日でしたが、その際に米国FDA草案文書『Medical Device Use-Safety: Incorporating Human Factors Engineering into Risk Management』も併せて発行されました。その強制力のないガイダンスがきっかけとなり、業界内での議論が10年以上も続くこととなりました。2011年6月21日、米国FDAは新情報を更新版のガイダンス草案として発行しました。
Shannon was leading the CDRH Human Factors team at the time of the guidance release and is also on the AAMI HE – Human Factors Engineering Committee providing input to IEC/SC 62A/JWG 4 – Medical devices - General requirements for safety and essential performance – Usability, through the U.S. TAG to IEC/SC 62A.
OHP:Shannonさん、本日はお越しいただき、ありがとうございます。今回のインタビューを本当に楽しみにしておりました。これまでのバックグラウンドと、ヘルスケアにおける人的要因およびユーザビリティの早期からの提唱者の1人にどのようにしてなったのかについてお話しください。
SH:お招きいただきありがとうございます。私は生まれながらの気質とトレーニングのおかげでシステム・エンジニアとなり、人的要因のバックグラウンドを持っています。でも、キャリアはそこから始まったわけではなく、学士号は機械工学です。初めて働き始めたときは、ある医療機器グループに就職しました。新しい仕事(そして新しい業界)で軌道に乗り始めたころ、当時取り組んでいた注射ペンのプロジェクトの現場で障害が発生したのですが、私たちにはそのデバイスの障害の理由がわかりませんでした。数か月間、テストと調査作業を行った結果、そのデバイスにバターと自動車のオイルが付着していたことを突き止めました。そのオイルのせいで、プラスチックがもろくなっていたのです。それは、人的要因問題がどのように明るみに出るのかを示す好例でした。注射ペンを使用していた患者さんたちは、デバイスが「きつくて動きにくい」ことを嫌がっていました。そのため、自分で油を塗っていたのです。そこで、私はこう考えました。「人々がデバイスに対して文字どおり何でもできる場合、適切な要件をどのように記述できるだろうか」と。ヒラメキの瞬間が訪れた結果、私は人間の行動と能力、そして人々は瞬間的にどのように意思決定を下すのかに関する授業を受け始めました。そこを出発点として、その興味に取りつかれ、システム・インターフェイスの道に進みました。
1990年代後半のこの時点では、「人的要因」はまだあまり注目を浴びるテーマではなかったことを思い出してください。私はこれが医療機器製品開発プロセスの一部、しかも主要な部分になるべきだということに気付きました。その瞬間から、私は安全で効果的な医療製品の未来が成功するためには、人的要因が鍵となることを鋭く意識し始めました。
私は医療機器業界でずっと働いてきたので、パッケージングとラベリングに関わっている人たちとはすぐに仲間になりました。彼らは人的要因の必要性をすぐに理解してくれました。私の経験では、パッケージングとラベリングは遅れて参加する傾向があり、ユーザー・インターフェイスの最適化のためにあらゆる状況に対応できる必要がありました。たとえば、ユーザーの責任をほのめかすような「ユーザー・エラー」という表現がまだよく使われていた当時、「愚かな」ユーザーに対処するために新しいラベリングまたはパッケージングの要件が作成されました。このような取り組みの遅れによって私たちがはっきりとわかったことは、開発過程全体を通じたユーザー・インターフェイスの最適化(製品、パッケージング、ラベリングを含む)がより良い設計につながり、誤った方法での使用が少なくなるということでした。
私はすぐに彼らと意気投合し、人的要因に関する意識と知識を高める機会を見つけました。この素晴らしい取り組みは、まさにこのようにして始まりました。
OHP:あなたは業界の真のパイオニアだったのですね。現在の方が人的要因およびユーザビリティの実施に対する受け入れや欲求があると思いますか?
SH: はい。ガイダンスや標準規格だけでなく、知識と実践の積み重ねに取り組んできたグループのおかげです。私はこれを人的要因コミュニティのおかげだと思っています。2000年に私の現在の会社を始めたBob North、Ron Kaye、Molly Story、Patricia(Pat)Pattersonなどの人たちのおかげです。早い段階でPatやBobに会えて、彼らが会話を促進するために行っていたことを知ることができたのは幸運でした。彼らは人間の能力、教材の設計、タスクの分析などについて話していました。そのおかげで、私はこの業界でできることがわかったのです。20年後の現在の状況で、これらの要素が使用法関連リスクにどのように寄与しているのかにおいて、このような論点がより理解されるようになりました。
「使用法関連リスク」は医療機器の人的要因およびユーザビリティの基礎であるため、そこからお話します。1998年になっても、リスクを設計故障モードまたはプロセス故障モードと関連付けて考えるのが常識でした。ただし、使用法関連リスクはより新しいコンセプトでした。そして、その考えがFDAから、特にJay CrowleyとRon Kayeから大きな支援を得ました。彼らは人的要因を中心とした初期のFDAガイダンスの一部を作成していました。彼らは市場投入前の審査室にいたわけではないので、その当時は業界から興味深いものとして見られていたと言えるでしょう。その後、医療機器の人的要因を中心としたガイダンス草案が2011年に発表され、このようなプロセスがよりはっきりと定義され、話し合われるようになりました。「使用法リスクと人的要因を評価したことはありますか?」2011年頃に規制当局がそのような質問をするようになって、状況が動き始めました。
それから間もなくして、私は医療機器・放射線保健センターのFDA人的要因チームに加わり、そのチームを率いることになりました。
OHP: では、あなたは初めから人的要因および使用法関連リスクに関与していたと言って間違いないのですね。
SH: はい、かなり初期から関与していました。この分野の成長と医療製品や患者の安全への影響を見ることができたのは、本当に素晴らしいことでした。FDAでは、チームはさまざまな審査部門をサポートしていたので、さまざまなタイプのデバイスを見たり、人々が人的要因をどのように捉えているかを知ったりできたのは、興味深いことでした。
OHP:心臓血管や呼吸器官では人的要因が異なるということをおっしゃっているのですか?
SH: FDAチームは人的要因およびユーザビリティのガイダンスを2016年にまとめ、国際標準規格は2015年12月に更新されました(IEC規格)。一部異なる用語が使用されていますが、これらの両方に人的要因(ユーザビリティ)エンジニアリングのプロセスとそれを製品開発に組み込む方法がまとめられています。その情報が発表されたことで、業界および審査員に一貫性のあるガイダンスを提供できるようになりました。異なっていたのは、人的要因データが必要とされる時期に基づく要求でした。これは、審査部門と使用法関連リスクに基づいていました。誤った方法での使用が重大度の高い損害につながる可能性がある場合、人的要因データはそのリスクを理解するのに役立ちます。このような観点から、市場投入後のデータを背景として、特定の質問を理解することが必要な領域があります。
OHP:規制当局によって尋ねられる主な質問は、人的要因のテストを中心としたものですか?
SH: 私の経験からすると、歴史的に見て(また過去10年の変化から)、企業が人的要因を開発プロセスにまだ組み込んでいない場合、規制当局のデータ要求に応じるのは困難です。人的要因の調査が必要となるデータが要求された場合、このような調査には3~6か月かかることがあるため、予定されていなければ大幅な遅れにつながる可能性があります。そのため、このような場合は保守的になります。しかし、プロセスの大切さを意識して、人的要因を早期かつ開発プロセス全体(製品、パッケージング、ラベリングのユーザー・インターフェイス全体)に組み込むことで、企業はこれらの活動の効率と価値を見い出すことができます。早期に始めることで、設計を特徴付けるためのデータを構築することができるため、これは期待されることであり、また賢明なことでもあります。理想的な状況と言えます。それはソフトウェアまたは品質とコンセプトが似ています。品質とユーザビリティを製品に組み込むことで、最終的に安全と効果的な使用を裏付けることができます。
インタビューの結論については、来週ご視聴ください。