世界に有効期限が導入されてから約50年が経ちます。英国のMarks & Spencerストアは、1972年、徐々に低迷していったケーキのチェーン展開を見直し、食品に有効期限を表示するようになりました。この有効期限は、他の何よりも品質を重視していることを目に見える形で示して売上を伸ばすことを目的としていました。
現在でも、FDAの規制と監督を受け、有効期限が監視されている米国の食品は、乳児用粉ミルクだけです。この話でもまだ曖昧さが足りないと言うのなら、医療分野における有効期限に話を移しましょうか?
医療産業
医薬品から医療用品、医療機器から医療パッケージングまで、有効期限に関する調査により、想定内のことだけでなく予想外の所見もありました。
医薬品に関する想定内の所見と驚くべき所見:1979年の「National Drug Code Law(全米医薬品コード法)」と「Expiration Dating Law(有効期限日法)により、すべての医薬品に有効期限を明記することが義務付けられています。この法律は、米国内で製造・販売されるあらゆる医薬品および一般用医薬品(OTC)に有効期限を表示することを義務付けるものです。この日付は、製造業者が安定性試験の結果に基づいて設定することになっていました。そこから、メーカーが製品の有効性と安定性を「保証」する期限となる有効期限が設定されます。
驚くべき話が飛び込んできたのは、医薬品の有効期限に関する妥当性を巡って交わされた議論が目に入ってきたときです。FDAは長い時間の余裕、現在は「有効期限の延長」として論じられている問題を1986年にまでさかのぼる、と認めたようです。このプログラムは、公衆衛生上の緊急事態時に使用する医学的対策品(MCM)の備蓄を求める長期政府プログラムに対応して開始されたものです。特に、FDAは国防総省と協力して、有効期限延長プログラム(SLEP)を策定しましたが、そのきっかけは陸軍やその他のユニットが保有していた数十億ドルもの医薬品が、有効期限を迎えたために数年に一度廃棄され入れ替えられることを知ったことでした。この延長プログラムでは、FDAがその他の基準に加えて実施する期限切れ製品に関する定期的な安定性試験パラメーターを設定しました。定期的な有効性と安全性の再試験の結果に基づいて、日付の延長を実施できること(繰り返されることもよくある)が、一貫して実証されてきました。今では、FDAのウェブサイトに4件の「Approaches to Drug Product Expiration Date Extensions(製剤の有効期限延長に対するアプローチ)」が掲載されています。
医療用品(包帯、シリンジ、チューブ、クランプ、中針など)、驚くべき所見:それは、2014年に公開された『Anesthesia & Analgesia』誌の「Letter to the Editor(編集者宛ての手紙)」によって見事に実証された予測できない結末でした。
その手紙のタイトルは「Does it Expire, or Doesn’t It? Only the Manufacturer Knows for Sure(期限切れか否か?確かなことを知っているのは製造業者だけ)」で、差出人はフロリダ州にある病院に勤務する2名の医師と1名の看護学士です。彼らの懸念が生じたのは、内部での品質検査を担当したことがきっかけでした。特に、彼らは複数台の麻酔装置カートの棚卸しを行い、各カートについてさまざまな文書に記入しなければなりませんでした。カート記録簿に記載されているさまざまな医療用品を評価するにあたり、彼らは「期限切れとそうでない物を決定するときの論理が明らかに欠如していること」に当惑しました。
彼らが挙げた例の中には、有効期限が表示されたパッケージに入れられた鼻カニューレと、有効期限の表示がない使い捨てマスクがありました。30 mLのシリンジには、有効期限が設定されていましたが、製造業者が同じ10 mLのシリンジの方には設定されていませんでした。などなどです。彼らの所見には多くの実例と、舌圧子の製品寿命を決める要素は何か、といった追加の質問が含まれていました。
この手紙では続けて、この問題について問い合わせることにし、内部スタッフ、州の行政官、そしてフロリダ医療委員会に連絡した、と述べています。また、いくつかの医療機器メーカーにも問い合わせましたが、何度問い合わせても、有効期限に関してはだれも何も説明できませんでした。
彼ら自身が勤務する病院の文書類には、「滅菌品目には有効期限はなく、」「パッケージの完全性が損なわれていない限り」使用できる、と述べるポリシー文書がありました。それでは、目視以外でそれをどう判断すればよいのでしょうか?それ以上の情報は見つかりませんでした。
医療機器、驚くべき所見:医療機器には、確立した有効期限の要件はありません。記録に残っている最新のものは、拘束力のない1991年のFDAガイダンスである『Shelf Life of Medical Devices(医療機器の耐用期間)』です。技術の急速な進歩により、新しい移植可能な機器、薬物送達システム、および材料が作り出されているため、興味深いシナリオが現れてきています。今日の機器は、ハードウェア、ソフトウェア、ナノワイヤー、バッテリー、および多くのランオン・アプリを提供したり、専売の付随技術と連携して動作したりします。それらは新しいポリマー、プラスチック、化合物で作られているかもしれません。内蔵バッテリーの性能やワイヤーなどの特徴、技術アップデートやその他の無数の発展について、経時的な性能の評価は行われたのでしょうか?既存の安定性試験で、初めて提示されるかもしれない要素を適切に評価できるのでしょうか?これは会話を始めるきっかけとなります。
医療パッケージング、ワイルドカード。ISO 11607では、医療機器のパッケージングが「使用する瞬間まで機器の滅菌性を維持しなければならない」と定めています。これが声明です。
このように、医療機器に有効期限が必要であると規定されておらず、指針となるものが1991年の拘束性のないガイダンスであるとすれば、その先はどうなるのでしょうか?
医療機器の耐用期間の策定に関するFDAの拘束性のないアドバイスには、以下が含まれています(その他の一般的な推奨事項の中で)。
耐用期間については、設計プロセスの早期に考慮する。
材料、コンポーネント、およびパッケージングが耐用期間の特性に及ぼす可能性がある影響について検査する。
類似機器の文献をレビューする。
医療機器の標準的な安定性試験を実施する。
「出荷、保管、および使用」に想定される時間を加える。
時間の経過と共に、世界中の医療用品と医療規制の情勢は変化していき、継続的に発展していくことでしょう。